資産運用には、多くの方法があります。
この記事で紹介するiDeCo(イデコ)もそのひとつ。
iDeCoは個人型確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん)のこと。
「自分年金」とも言われます。
最近、「iDeCoってよく聞くけど、内容はよく知らない……」という方も多いかもしれません。
実は、僕もよくわかっていなかったのですが、2019年8月24日に開催された「会社員とフリーランスの資産形成、iDeCoとつみたてNISAを一日で学ぼう」というセミナーに参加して学んだことで、よく理解することができました。
iDeCoについて教えてくれたのは、税理士の大河内薫さん。

大河内さんといえば、52,000部を突破(2019年9月28日現在)した以下の本、『フリーランス税本(通称)』が有名です。
難しい税金のことをマンガでわかりやすく説明してくれます。
まさに税金のインフルエンサー!
こちらの本を読むと、税金に関する理解は進むはず。
フリーランスの人だけではなく、会社員にとっても役立つ情報が満載の本なので、ぜひ手に取ってみましょう。

堅実な資産運用の方法として、「つみたてNISA」と共に紹介されることが多い「iDeCo」。
この記事では、「実際、iDecoってどうなの?」「どのように利用すればメリットがあるの?」という疑問を解説していきます。
iDecoとは私的年金制度
iDecoとは、英語表記の「individual-type Defined Contribution pension plan」を略したもの。
僕たちは公的年金を支払っていますが、iDeCoは、それとは別に自分の年金を積み立てようというものです。
個人的には、「結局iDecoって年金なの? 投資信託なの?」というように、わかりにくい制度だなと思っていました。
早い話が、iDeCoは「株式投資」です。
ただし、年金としての側面をもっているので、優遇されている制度だということが理解すべきポイントだったんです。
セミナーでは、大河内さんが初心者にもわかりやすく説明してくれました。
学んだことを踏まえ、iDeCoについて解説していきます。
下記は、大河内さんの公式プロフィール。
大河内さんのYoutubeは、以前からよく視聴していたので、イベント募集開始後すぐに申し込みました。
※フリーランス税本の発行部数とYoutubeのチャンネル登録数は2019年9月28日現在の調査に基づきます。
セミナーの冒頭では、以下のようにおっしゃってました。

箱があって、運用商品を自分で選んで利用するというもの。
60歳になったら、運用益と元本がもらえるという制度です。
なるほど。iDeCoを一言で言うと、こんな感じなんですね。
わかりやすい!
公的年金が将来減少するのでは? と不安な人は多いはず。
メリット・デメリット、NISAとの違いはぜひ知りたいところです。
「つみたてNISA」は、こちらの記事で詳しく紹介しているので、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。
あわせて読みたい参考記事
→ つみたてNISAが投資初心者にもおすすめって本当?-資産運用を一日で学ぼう【イベントレポート】
iDeCoの4つの特徴

知っておくと得をするけれど、知らないと損をすることが多いのが日本の税制かなと思います。
そのような税制のカラクリを、大河内さんはYoutubeで「日本の闇」として、わかりやすく伝えられています。
僕はこの動画を見てから考え方が変わりました。
「知らないとマズイ……」と気付いたんですね。
まだの人はぜひ見て欲しい動画です。
得をするためには、
- 自分で勉強する
- 教えてくれる人がいる
しかないかな、と思います。
iDeCoも同じく、カラクリを知っているかどうかが大事ですね。

1つずつ見てみましょう。
iDeCoの特徴1:退職金の原資を作れる
iDeCoは退職所得控除が活用できるメリットがあります。
実は日本の退職金制度には税制メリットがあるんですね。
退職金の税制メリットをまとめると以下のとおり。
- 勤続30年で1,500万円の退職所得から差し引きで税金が安くなる
- 退職所得の算出は退職金-控除を引いた後、2分の1にすることが可能
- 分離課税は別で計算が可能
ここでは1つひとつのメリットを詳しく説明しませんので、詳細はググってみてください。
退職金の税制メリットをざっくり伝えると、退職金にかかる税金を少なくすることができる制度があって、iDeCoにも適用されるということ。
iDeCoで積み立てた資金を受け取る場合、「勤務年数」が「加入年数」に置き換えられます。
退職金制度がない会社員や、個人事業主にとっては、iDeCoを利用することがメリットになり得ますね。
今の時代、大企業でも終身雇用は崩壊しつつあります。
そんな時代なので、転職をしていくことが年収アップには欠かせませんが、そうした場合は退職金は不確定になります。
そもそも「自己都合退職」の場合、予定していた退職金の満額は受け取れない場合が多いでしょう。
そうした場合、iDeCoを活用するのは、有効な方法です。
あわせて読みたい参考記事
iDeCoの特徴2:所得税、住民税が安くなる
普通ならば払わなければならない税金が、ある制度を使えば納めなくてもよいなら、お得ですよね。
iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象になります。
例えば、拠出可能額別(iDeCoに掛けられる金額のこと)の税額メリットは以下の表のようになります。

つまり、年間の所得が330万円超695円以下ならば、8万2,800円も税金が安くなるということです。
しかし、注意点もあります。
注意点については、この後にデメリットとしてお伝えするので、そちらで確認してください。
iDeCoの特徴3:運用益に税金がかからない
株式や投資信託に投資して、運用益が出た場合、普通は20%の税金が取られます(厳密にいうと復興特別所得税もかかります)。
例えば、投資信託で60万円の運用益があった場合、その20%、つまり12万円を税金で納めなければなりません。
しかし、iDecoやNISAで運用すると、運用益が非課税となります。
これはかなり大きなメリットですよね。
「iDeCoの特徴1」でもお伝えしたとおり、退職金控除や公的年金控除も活用することで、老後の備えのために適している制度だと言えます。
iDeCoの特徴4:元本保証商品もある
NISAにはないiDeCoの特徴として、「元本保証商品」があることです。
株式や投資信託で資産を運用する場合、元本保証はないわけです。
つまり、損をしてしまう可能性もあるわけなんですね。
「損をしてしまう?」と聞くと、投資初心者にとっては避けてしまう原因にもなるかもしれません。
しかし、iDeCoには、
- 定期預金
- 確定拠出年金保険
といった元本保証商品があります。
特徴1、2でお伝えしたような税制優遇と合わせると、堅実な運用ができるというわけですね。
ただし、iDeCoの利用には手数料が掛かります。
「元本保証商品」の場合、手数料で元本割れする場合もあるので、注意が必要です。
iDeCo加入は年齢に注意

NISAは何歳からでも始めることができますが、iDeCoの場合は、始めるのにも受け取るのにも年齢の縛りがあります。
iDecoは原則として、60歳になるまでは積立金を取り崩せません。
ですから、近い将来にお金の必要な機会があるといったような人は、注意が必要です。
そして、iDecoは60歳~70歳の間に受け取りを開始しなければなりません。

たしかに年金のようです。
加えて、もう1つの注意があります。
加入期間が10年未満の場合に、受け取り開始年齢が61歳や65歳になることがあります。
簡単にまとめると、以下の表のようになります。
加入期間 | 受け取り開始年齢 |
---|---|
10年以上→60歳 | 60歳~70歳の間で受け取り開始 |
8年以上10年未満 | 61歳~70歳の間で受け取り開始 |
6年以上8年未満 | 62歳~70歳の間で受け取り開始 |
4年以上6年未満 | 63歳~70歳の間で受け取り開始 |
2年以上4年未満 | 70歳の間で受け取り開始 |
1月以上2年未満 | 65歳~70歳の間で受け取り開始 |

iDeCoのデメリット

しかし、落とし穴があります。

いろいろなメディアでiDeCoのおすすめ記事をよく見かけますが、
- 節税になる
- 運用益が非課税になる
というメリットばかりが強調されている気がします。
当然、デメリットもあるので、しっかり把握しておきたいですね。
iDeCoのデメリット1:手数料がかかる
iDeCoで積み立てた資金を受け取る方法は、大きく2種類あります。
- 資金を一括で受け取る「一時金受給」
- 複数年にわたって分割して受け取る「年金受け取り」
この2種類です。
「一時金受給」の場合は、退職所得控除が活用できるので、とても有利です。
しかし、「年金受け取り」の場合は、受け取るたびに432円の「手数料」がかかります。
月々で受け取ったとして、年間で5,184円……。
馬鹿にできない金額になってしまいますね。

iDeCoは金融機関だけではなく、国も関わっている制度なので、手数料も高くなっているのだとか。
掛かる手数料は、他にも以下のとおり。
(2019年9月22日時点の調査に基づきます)
- 加入時の手数料・・・2,777円
- 口座管理手数料(毎月)・・・金融機関によって金額は異なりますが、167円~617円ほどの幅があります。
転職などをして、職場を移るときに発生する手数料もあります。
詳しくは以下のWebサイトを見てみましょう。
参考(外部サイト)
iDeCoナビ(運営:特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会)
→ https://www.dcnenkin.jp/search/commission.php
iDeCoのデメリット2:元本も課税される

積み立てるときは、所得税、住民税が安くなるiDeCo。
しかし、受け取るときは元本にも税金が掛かります。
例えば、
- 30万円を積み立てた
- 運用益が0円だった
↓
受け取るときに、元本30万円に税金がかかるので、マイナスになってしまう!


公的年金も受け取るときに課税されます。
つまり、支払うときに節税できるものは、受け取るときに課税されるということは知っておくといいですね。
「iDeCo=節税」と考えることの落とし穴
大河内さんがまとめてくれた下図のスライドが、iDeCoの本質を上手くまとめてくれています。

噛み砕くと…
・税率30%の人が1万円を積み立て
→ 積立時に3,000円節税できる・しかし、iDeCoの受け取り時に課税
→ 税率30%ならトントン?
→ 税率40%なら、むしろ損?
iDeCoを活用して得をするためには、この記事の最初に掲載した「拠出可能額税額メリット表」とにらめっこをする必要がありそうです。
今は年収が多くて税率が高い場合でも、受け取るときの税率が低ければ、得をすることになります。
定年退職をして、iDeCoで積み立てたお金を受け取るときは、税率が下がっている人は多そうですよね。
70歳になったときの年収が40歳のときより高いのであれば、それは幸せなこと。
そもそも年金の心配をする必要はありません。
まとめ:iDeCoを利用すると得する人
ここまでiDeCoについて、お伝えしました。
iDeCoは複雑な制度です。
勧められるがままに加入するのではなく、税制と年金の制度について、少し勉強してから検討したほうが良さそうです。
最後に、iDeCoを利用して得する(かもしれない)人とそうではない人をまとめます。
「(かもしれない)」と付けたのは、どこまでいってもiDeCoは株式投資だからです。
株式投資は必ず運用益が出ると保証されているものではありません。
原点に立ち返って、あらためて認識しておきましょう。
iDeCoを利用して得する(かもしれない)人
- 退職金制度がない会社員
- 所得が高い会社員
iDeCoを利用してもお得感が薄い人
- 現在の年収が低い人
- 専業主婦
- 節税対策をしている個人事業主
- 住宅ローン減税などで控除を利用している人
iDeCoは60歳まで受け取れません。
近い将来に「マイホームを建てる」「子どもの教育費がかかる」など、大きな出費を控えている人は「つみたてNISA」のほうがオススメです。
「つみたてNISA」であれば、いつでも受け取ることができますしね。
また、20代~30代前半の若い世代にとっても、メリットが薄いかなと個人的に思います。
これからの人生において、不確定な要素も多いですし、自己投資に充てたほうがリターンは大きいのではないでしょうか。
誰もが得をする制度なんてありません。
iDeCoもNISAも、自分にとってメリットがあるかどうかをしっかり検討しましょう。
iDeCoのことをもっと知りたいという方は、大河内さんのYoutubeがオススメ!
おすすめの動画を貼っておきます。
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