こんにちは。分析おたすけマンこと、山根です(Twitterはこちらから)。
シリーズでお伝えしているマーケティング基本講座。
復習するとマーケティングの基本手順は下図のとおり。
今回は第3回目、テーマは市場調査です。

前回の記事では、マーケティングミックスの4Pと4Cについて解説しました。
まだ読んでない方は、先にこちらの記事から目を通してみてください。
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この記事はこんな方におすすめです。
- マーケティング・広報の仕事に就いていてスキルアップをしたい方
- マーケティング職への転職を希望している方
- ブロガー、アフィリエイターなど自分のメディアを持っている方
市場調査を本格的にするためにリサーチ会社に依頼した場合、数十万円くらい費用がかかることも。しかし今の時代はネットの情報を活用すれば、十分なリサーチが出来てしまいます。

市場調査とは?
市場調査とは、アンケートなどにより、
- 市場の動向
- 市場のトレンド
- サービスの認知度や満足度
- 顧客のニーズ
を調べること。
簡単に言うと、情報を収集して分析するという感じです。
市場調査を収集して、未来予測を含んだ分析をすることをマーケティング・リサーチと言うこともあります。
市場調査が大事な理由
なぜ市場調査が大事なのかというと、顧客層や人数を増やすためです。
ブログやオウンドメディアであれば、読者層やPV数を増やすということ。
数を打てばいつかヒット商品が生まれるだろうと、勘に頼るのはリスクが大きいです。
どんなに素晴らしい商品・サービスでも、万人に受け入れられるということは現実的にほぼ不可能。
そこで市場を細分化(セグメンテーション)することになってきます。
そして、セグメントをするにあたり必要な戦略が「市場調査」となります。
知っておきたい!定量調査と定性調査
その市場調査ですが、大きく分けると調査の方法は2つ。
- 定量調査
- 定性調査
です。
定量調査と定性調査の使い分け方としては、以下のように考えるといいでしょう。
定量調査
代表的な定量調査は「アンケート」です。
アンケートといえば、あらかじめ用意された質問に対して、「はい/いいえ」や「1~5から回答する」といったような方式ですね。
回答者が多ければ多いほど、得られるデータの精度は高くなるという特徴があります。
Googleフォームやネットリサーチツール、SNSのアンケート機能など、最近は安価で手軽にアンケート調査できる方法が増えています。
定量調査のメリットとデメリットを挙げておきます。
■メリット
- インターネットを介して簡単に実施できる
- 不特定多数の回答を得やすい
■デメリット
- 集計したデータの解釈が難しい
- アンケートの目的が明確でないと、有益な回答を得られにくい
- インターネットの場合、利用する年齢層が限定される(シニア層の回答を集めるのは困難)
定性調査
代表的な定性調査は「インタビュー」です。
マンツーマンで行うインタビューもあれば、数名が集まるグループインタビューなどですね。
アンケートといった定量調査では得ることが難しい、「経緯」「理由」といった深掘りした内容を知ることができます。
ひと昔前であれば、ある場所のある時間帯に複数人を集めるのは大変というデメリットがありました。
しかし今はSkypeやZoomといったミーティングツールを使うことで、比較的簡単になったと言えます。
ツイキャスやYoutubeライブなどを活用してもいいと思います。
定性調査のメリットとデメリットも挙げておきます。
■メリット
- 発言の仕方や表情など、対象者の生の反応を感じつつ調査できる
- グループインタビューの場合、参加者同士の相互作用も期待できる
■デメリット
- インタビューの場を設けるための日程調整が難しい
- 人前で話しづらいテーマには向いていない
- 司会もしくはモデレーターの力量で成果が異なってしまう
定量調査と定性調査はどちらがいいの?
上記で述べたように、定量調査と定性調査では目的が異なります。
どちらがいいか? というよりも、知りたいことによってどちらも使うべきでしょう。
定量であれば、数値化した情報やデータを分析すればいいので、意思決定のスピードが早くなります。
一方、定性の場合は、過去にとらわれない未来志向の分析ができるので、意思決定の精度は高まります。

市場調査の重要性は増している
マーケティングといえば広告やキャンペーンといったイメージが強いかもしれません。
しかし、マーケティングの本質は、
- 顧客が求めているものを理解する
- 市場を創造する
- 競合との公正な競争の中、市場を活性化する
ということです。
ユーザーの価値観が多様化している時代なので、商品やサービスは機能や品質だけでは成功しません。
つまり、どこまでユーザーのことを理解できるか? ということが大切。
- どんな悩みがあるか
- どんな考えで行動しているのか
というユーザー視点で考える必要があるのですが、企業のマーケターは「ユーザーになったつもり」で終わってしまっていることがけっこう多いんです。

実際にユーザーを巻き込んでリサーチしていくことが大切。
市場調査で役立つ必見Webサイト10選
市場調査が大事なのはわかったけれど、小さい会社や個人が相当数のデータを集めるのは大変です。
かといってリサーチ会社やコンサルタント会社に調査を依頼するのは費用がかかります。
そこで、市場調査に役立つWebサービスを紹介します。

生活者の意識がわかる「生活定点」

博報堂生活総研が運営している「生活定点」。
同じ質問を1992年から隔年で集計されています。
そういった方法を「定点調査」というのですが、時代にあわせた回答の変化を見ることができます。
「あなたの暮らし向きは去年と比べてどうですか?」
「サラリーマンなら会社都合の転勤や退職もやむを得ないと思う」
「外国人と結婚することに抵抗はない」
というような質問など、26年間・約1,400項目の調査結果が無料で公開されています。

日本を統計で見る「マクロミルモニタサイト」

大手調査会社マクロミルが運営しているサイト。
無料会員登録したモニターに質問を投げて、その回答を集計したサイトです。
モニター会員はアンケートに回答するとポイントをもらえる仕組み。
「〇〇人に聞いてみた」という感じで、調査されたデータが掲載されています。
「10代20代女性に聞いてみた!今年のバレンタインの反省点」
「1000人に聞いてみた!年末年始のイベントで食べるものは?」
など市場調査というよりはネタ的な要素が強いですが、意外と参考になります。
食や日用品の調査データが見られる「J-marketing.net」

食料品や日用品のデータを中心に、市場動向や消費者のブランドイメージといった調査も確認できるサイトです。
マーケティングをする場合、消費動向を探るとトレンドが見えてきやすいので、定期的にチェックできるといいですね。
J-marketing.netでは
「ファーストフード店の再利用頻度」
「チョコレートブランドの認知調査」
といった調査結果が掲載されています。
会員登録をすると詳細なデータを見られるようになり、さらに無料会員と有料会員で閲覧権限が区分けされています。
ざっくりとしたトレンドを見るだけであれば、無料会員でも十分です。
「J-marketing.net(JMR生活研究所)」はこちらから
時事のトレンドがわかる「NTTコム リサーチ」

NTTグループの調査会社「NTTコム リサーチ」がITトレンドや働き方の意識を調査してまとめているWebサイト。
主にはIT動向や消費行動などネットリサーチで収集したデータが載せられています。
「住みたい&観光で訪れたい市区町村」
「単身と同居者でレジャー・娯楽・耐久消費財など支出に対する特徴」
など、分析した総括とともに調査結果が掲載されています。
とてもわかりやすいWebサイトです。
調査データのおまとめサイト「調査のチカラ」

ITニュースサイトを運営するアイティメディアが、インターネット上に公開されている調査データ情報をまとめたサイト。
ライフスタイルからビジネス、マーケティングまで幅広いジャンルの調査結果がわかります。
検索だとヒットしにくい情報も「調査のチカラ」で探すと見つかるこもあります。
マーケティングに役立つ調査データが満載「インテージ」

調査会社インテージが運営するWebサイトにレポートライブラリが用意されています。
18のカテゴリに分け、さまざまな調査が掲載されています。
また「Intage 知る Gallery」というオウンドメディアには、調査レポートの分析記事もあるのでとても勉強になるサイトです。
視覚的に分かりやすい「統計ダッシュボード」

総務省が調査したデータを活用する目的で運営されている「統計ダッシュボード」。
視覚的にわかりやすい調査結果が特徴です。
約5,000の統計データを、「人口・世帯」や「労働・賃金」など17の分野に整理して収録されています。
日本を統計で見る「e-Stat」

「e-Stat」は、各府省が公表する統計データを一つにまとめたWebサイト。
統計データを検索したり、地図上に表示できるなど、便利な機能を備えた政府統計のポータルサイトです。
Excel、CSV、PDFなどのファイル形式でも提供されていて、資料制作に重宝します。
スマホ・タブレットの市場動向なら「MMD研究所」

MMD研究所(モバイルマーケティングデータ研究所)はモバイルに特化した調査研究機関。
Webサイトでは、スマホ・タブレットに関するさまざまな調査データを見ることができます。
モバイルユーザー市場の変化は激しく、情報を追うのは大変。
MMD研究所の調査データを定期的にチェックすると、動向が把握できます。
市場規模やシェアなどマクロな分析なら「矢野経済研究所」

老舗の調査会社である矢野経済研究所のWebサイト。
教育産業、住宅産業といったような大きな区分での分析を知るのにおすすめです。
なかには購入をしないと見られない資料があって、かなり高価です。
傾向だけ知りたいのであれば、無料で見られるものだけで構わないと思います。
【ビジネスモデルの事例】十勝バスの市場調査
観光や資源など、さまざまな分野で北海道が今注目されています。
とはいえ、暗雲が漂っていたのがバス事業。
北海道だけではなく、全国のバス会社も同様です。
日本バス協会によると、全国の対象事業者のうち7割は赤字事業者だという調査結果があります。
厳しいバス事業のなかにあって、北海道帯広市の「十勝バス」も40年間にわたって右肩下がりの経営を続けていました。
過疎化が進む地方のバス会社は厳しいですよね……。
40年ぶりの利用客増加を実現した十勝バス

そんな時代背景のなか、十勝バスの利用者数は2011年に40年間減り続けた利用者数に歯止めをかけ、前年比5%の増加を毎年続けています。
まさに奇跡の復活劇。
業績のV字回復を見事に実現しています。
なぜ十勝バスは厳しい業界事情にも関わらず、地方創生の代名詞となったのか?
その成功の要因には、徹底したマーケット・リサーチの成果があるんです。
十勝バスのV字回復の要因はリサーチ
十勝バスは北海道帯広市にあるバス会社。大正5年に創業し、地元では「カチバス」の相性で親しまれています。
そんな十勝バスも人口減少・過疎化により、必然的に経営危機に追い込まれていました。
十勝バスの経営不振の要因は、利用客数の減少に他なりません。
利用客にはアンケートを介して顧客満足度を上げるという取り組みはされていたようですが、それでは利用していない人の意見は聞けません。
そこで同社が行ったことは、バスの停留所がある近隣世帯へのヒアリングでした。
そしてヒアリングの結果、衝撃的な答えが浮かび上がったのでした。
リサーチをもとに「強み」を最大限にする工夫
調査の結果わかったことは、
ということだったんです。
ヒアリングで聞けた内容は、
「ドアが前後に2つあって、どちらから乗るのかわからない」
「運賃の払い方がわからない」
「家の前にあるバス停からどこに行けるのかわからない」
ということだったそう。
つまり、バスを利用しない人の多くは、不便だからではなく不安だからだったということ。
バスに乗り慣れている人にとっては、思いもよらない理由ではないでしょうか。
十勝バスはその調査結果を受けて、
- 子どもでもわかるように、マンガでバスの乗り方をまとめた冊子を配布
- バスのルートを見直して利便性重視の路線に変更
- 目的別の時刻表を作成
といった地道な改善を進めたそうです。

この復活劇は、さまざまなメディアで紹介されました。
まとめ:知っているつもりは危険!ゼロ思考で市場を分析することが大切
市場調査の重要性をまとめると、
ということです。
市場は変化します。
ましてやユーザーや消費者行動の変化は、本当に早いです。
そんな状況なので、「知っているつもり」というのはリスクでしかありません。
常にゼロの思考から考えることができれば、改善につなげるアイデアが浮かびやすくなるでしょう。
というわけでマーケティング基本講座の第3回でした。
第4回をお楽しみに!
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