相関係数、回帰直線、ABテストなどビジネスで統計用語を使うことが増えてきました。
「文系出身だから……」と言って、数字を使うことを避けていては、いつまでたっても自分の経験と勘だけで仕事をしてしまうことになります。
「成功できる自信があるから大丈夫!」
ときには、そういった強気の姿勢も大事です。
仮に成功したとして、その成功は繰り返し続けることが可能でしょうか?
万が一、失敗したとして、経験と勘に頼った仕事で失敗から学べることはあるのでしょうか?
その問いに対して、「たしかにな……」と思った方に、ぜひオススメしたい本がこちら。
『仕事で数字を使うって、こういうことです』(深沢真太郎 著)

「分析」と名乗っている僕ですが、今回紹介する本には少なからず影響を受けています。
ビジネスで数字を使うメリットは大きいです。こちらの記事もあわせてどうぞ。
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『仕事で数字を使うって、こういうことです』ってどんな本?
著者の深沢真太郎氏は、日本のビジネス数学者という肩書です。
日本ビジネス数学協会の代表理事を務め、BMコンサルティングという会社の代表取締役です。
数学、協会、コンサルということで、経歴だけ見て、文系の方々は目を背けてしまうかもしれません(笑)
しかし、ちょっと待ってください。
この本がすごいのは、
- 楽しく読めるストーリー仕立て
- 誰が読んでも明日から使える数字のテクニックが満載
という点なんです。
キャラ立ちしているストーリー
『仕事で数字を使うって、こういうことです』は、あるアパレル企業が舞台。
- ヘッドハンティングされて入社した理系女子である柴咲智香
- センス抜群のファッション好きの営業部リーダーである木村斗真
この二人のやり取りでストーリーが進んでいきます。

木村は会社のホープとして期待されているものの、ちょっとチャラいうえに、経験と勘だけで仕事を進めてしまっていました。
木村「俺が売れると思ったものは、必ず売れるんだよ」
智香「そんなことはあり得ません。先輩が何もしなくても、前週は数字が伸びたと思いますよ、きっと」
という感じで、智香のツンデレぶりが際立つのと、二人の対立構造が読みやすさを際立てます。
毎日目にする数字を使いこなす
本書では、仕事をしていると必ず目にする数字をもとに、
- 勘違いしやすいポイント
- 使いこなすコツ
が分かりやすく解説されています。
例えば、ある日の会議で下記のような報告がされました。
- 前週の売上額は全店舗で、前週比108.7%
- 5,900円のパステルカラーのVネックニット→前週比20%アップ
- 木村の指示で店頭露出を増やした9,800円の白のセンタープレスパンツ→一気に伸びた
- スーツ→セットアップアップで売れた点数は前週比15%アップ
その好調な結果に対して木村は、
「経験によれば、この時期は春を意識したいからパステルカラーのトップス、すでに持っている人はトップスが映える白パンツ。スーツのセットアップは新生活を前にした駆け込み需要」
というように、狙いがあたり満足気です。
実際の会社でも似たような状況がありそうですよね。
そこで智香のひと言。
「結局、前週比108.7%の要因は何なのでしょうか?」
報告を聞いただけだと、戦略が当たって「良かった! 次の議題は何?」と進みそうなものですが、ここに落とし穴があったりします。
要は、「それ以外」の数字も見なければ、良かったかどうかの判断はできないということ。

『仕事で数字を使うって、こういうことです』のおすすめポイント
評価を見極めるためには、「比較」が必要です。
比較とは何なのか?
『仕事で数字を使うって、こういうことです』で紹介されている内容をもとに解説していきます。
見極めるためのABテスト
バナー広告を例にしてみます。
バナーAのクリック率が50%だった場合、どう評価するでしょうか。
おそらく「かなり高い数値」と思うはず。
その結果、バナーAのパフォーマンスはいいということになります。
では、同じ条件で表示させていたバナーBのクリック率が60%だったとしたら、どうでしょうか?
先に紹介したある日の会議では、この「バナーB」のことを把握していないんです。
評価はそれ以外を見てから
最初は投資や新規性で成長した会社も、やがて衰退していく企業はいくつもあります。
今の時代は移り変わりが激しいですし、事実、どんぶり勘定のため、正念場を乗り切れない会社は多いようです。
「前週比」「前年比」という比較は、機械的に使ってしまいがち。
しかし、比較が意味をなすのは、前提が同じ場合に限るということは忘れてはいけませんね。
- 売上は天気に影響を受ける
- 売上は曜日に影響を受ける
- 売上はブランドの認知度に影響を受ける
などを加味せずにした評価は意味がないと言えます。
このように数字の落とし穴についても解説がされています。
紹介されている数字の読み解き方
『仕事で数字を使うって、こういうことです』では、下記のような数字の読み解き方が紹介されています。
- ABテスト
- 前年比について
- ビジネスパーソンの数字の使い方
- 数字のバラツキを調べるという発想
- 相関係数
- ビッグデータ時代における数字との向き合い方
- 予測と予想の違い
- 数字を使った意思決定の方法
- 実数と割合の見方
- 分析とは?
- 5分で終わるプレゼンの方法
- 数字を使ってコストカットの意義を伝える
1冊250ページほどで、サクサク読めます。
まとめ:仕事が遅い人は、数字の扱い方でわかる
僕は、この本を読むまでは、やらなきゃいけない事が多すぎて、仕事でいっぱいいっぱいになることも多かったです。
自分なりに仕事を早く進める工夫はしていました。
- パソコンのスキルや知識量を身につける
- 自分自身の作業スピードを早める
といったように、体力的にも精神的にも疲れるやり方を重視していたんです。
もちろん、上記に挙げたことも大事です。
しかし、数字の使い方・コツがわかり、提案書や報告書を工夫することで、
- 無駄な会議が減った
- 無駄な資料作成が減った
という効果があり、時間ロス改善のインパクトはかなり大きいものでした。
ビジネスパーソンにはかなりおすすめの本ですが、意外と知られていないのが本書。
ぜひ手に取って読んでみてください。
ちなみに、数学女子シリーズは続編もあります。
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